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ゴードン・ブラウン氏について [イギリス考]

昨日は、ヨーク大学にて現在イギリス財務省にて働いていらっしゃるT氏のお話を聞く機会を得た。日本財務省からの出向という形で3年ほどイギリス財務省で働いていているT氏は、そのため両方の財務省について知悉しておられる。よって講義は「日本と英国の政治、行政の比較」と主題を打ち、T氏の実体験を交えた英国の行政スタッフの現状を軸に、日本の行政スタッフ(すなわち官僚)を取り巻く環境との比較、今後へ向けての提言などを盛り込んだものであった。

此処で、英国財務省と聞いてイギリスの政治を知っている方はピンとくるかも知れない。というのは、英国財務省は現在のブレア首相の後任として労働党党首になることが確実なゴードン・ブラウン氏を財務大臣として頭にいただいている省なのだ。教育改革法をめぐっての党内のごたごた、相次ぐ部下の不祥事によってブレア氏の党首続投は厳しい状況になってきている。今後の労働党が与党として生き抜いていくためにはブラウン氏が党首になる以外はありえないという状況だ。

もちろん、次の選挙で労働党が勝った場合という条件尽きだが、彼が次期の英国首相になる可能性は非常に高い。そうすると、彼のパーソナリティーや政治的スタンスがそのまま今後の英国政治の方向性を決めてゆくということになる。イギリスの教育政策をこちらで勉強しているものとしては、非常に興味深いものがある。

今回の訪ヨークにあたっての私の最大の関心事はゴードン・ブラウン氏がどんな人物であるのかであった。そのため講義の後の質疑応答の際には、日英政治比較が主題である今回の講義とは相当トピックが離れてしまうという失礼は承知で、ブラウン氏の政治スタイルについてお話を伺った。

T氏のお話によると、ゴードン・ブラウン氏は強固に時分の政治スタイルを持っており、そのスタイルは伝統的左派の「弱者保護」。非常に興味深かったのは、昨年2月4日、5日両日にロンドンにて行われた「経済のサミット」とも言われるG7財務省・中央銀行総裁会合があったのだが、その主要テーマを開発途上国、特にアフリカの貧困国の支援としたのは、彼の強力なイニシアチブがあったからこそなのだとか。以前にも、「重債務貧困国に対する債務返済免除に、IMFが保有している金(きん)を使え」(ゴードンブラウンその救世主的な情熱、極東ブログより)などといった発言をするなど、相当過激な左派の方のようだ。

党首になるにあたっては労働党右派との協調から、多少中道に近くなるであろうが、それにしても労働党右派のブレア氏から左派ゴードン氏への禅譲により、政策の重点に相当な変更があるのは間違いないと思う。

なおT氏は「英国便り」という名のご自分のホームページをお持ちで、その中でご自分の英国財務省での経験をつづっていらっしゃる。英国財務省と日本の財務省の比較についても詳しいので興味のある方はぜひ見ることをお勧めする。(月刊現代2005年5月号掲載記事「若きキャリアの日英『官僚格差』論」

禅譲する:abdicate

 

 


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コメント 2

Watcher

なんか、そのT氏の講演自体にも、興味があります。(笑)(こちらとしては学校の事務方の出方は、割と死活問題だったりしますから…。)
…リンク先の月刊現代の記事を拝見しましたが、やっぱり、という思いが強くなりました。イギリスという国は「大事を誤らない」ようにするシステムであって、日本のように「常に誤らない」ようにするシステムではない、というような印象を持っていましたが、再確認できたような気がします。
イギリス型で何かを行おうとするには、優秀なトップがいなくてはならないですね。日本のように、平均的に優秀であることを下から積み上げていくやり方とは、色々な意味で異なると思います。
…あー、文系の方(ひょっとして、ご専門です?)に向かって、言う意見ではないですね…失礼しました。一素人の戯言と思って御笑読ください。
by Watcher (2006-05-22 06:46) 

ガワ氏

ああっこんな小難しい話にまでお付き合いくださるとは、本当にありがとうございます。しかもリンク先までよんでいただいて。

>(こちらとしては学校の事務方の出方は、割と死活問題だったりしますから…。)
お話良くわかります。今の大学独立法人化も、政府のイギリス好きの流れと無縁ではありませんから。

イギリスという国のシステムに対するWatcherさんの指摘はまったく持ってその通りだと思います。日本の場合「常に誤らない」ように予算を積み上げるから最終的な予算が歳入を異常なくらいにオーバーしてしまうんですよね。それがイギリスだと上が大枠の予算をバサっと決めてしまって下に下ろすというシステムなので歳入に対する予算超過を抑えることが可能なんですって(T氏談)。

まーおかげで下にしわ寄せがドンっと来るわけなんですけどね。パスポートの延長申請なんて、4ヶ月もかかりましたもんね私。雇えるスタッフが少ないのに仕事が多いからしょうがないですね。日、英双方共に一長一短あるようです。
by ガワ氏 (2006-05-22 08:29) 

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