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マンチェスターに行ってきた [イギリス考]

月に一回ほどのペースで、今通っている語学学校がバス遠足を行う。シェフィールドを中心にバスで大体2時間以内で行けるところへ、生徒たちを連れて行ってくれる。そして、今日はマンチェスターであった。

マンチェスター・ユナイテッドというサッカーチームを聞いたことがある方は多いと思う。イギリスで(いや世界でかも?)最もお金を持っているサッカークラブである。マンチェスターはそのチームのホームタウンである。ここマンチェスターには、マンチェスター・ユナイテッドのほかにマンチェスター・シティというサッカークラブがある。余談だが、ここ出身のバンド、OASISはシティのサポーターである。

世界的に有名なサッカークラブのホームタウンであるということ意外に、忘れてはならないのが、マンチェスターがイギリス産業革命発祥の地であるということだ。イギリスの産業革命発祥の地ということは、世界の産業革命の発祥の地ということである。イギリスが世界中で売りさばいた綿花製品、その生産性を極限まで上げるために、工場制手工業に始まる生産形態改革やさまざまな道具の発明がなされたのである。19世紀を通してマンチェスターは世界の産業の中心であった。

産業革命の先駆であるのと同時に、マンチェスターは社会問題の先駆でもあった。労働者たちは劣悪な環境の下、なんら社会的権利を主張する力も与えられずただただ働かされていた。例えば、4歳にも満たない子供が炭鉱の狭い坑道に押し込まれ労働していたという。カールマルクスの盟友であるエンゲルスがここマンチェスターにおいて、世界最高水準の国の労働者達がいかに厳しい経済状況そして政治的に無力であったかを目の当たりにしたことで、自身の社会主義者としての自己を確立していったことは有名である。実際、マルクスとエンゲルスはマンチェスターの事例を彼らの理論を構築する上でのたたき台にしている。

そんな、マンチェスターなんである。

さて、バスはシティセンターのはずれにあるThe Museum of Science & Industryという博物館の前で我々をおろした。博物館は以前の綿花工場跡地を利用したものだ。以前のエントリーにも書いたシェフィールドの鉄鋼博物館に然り、どうも以前の工場を博物館化する癖がイギリス人にはあるようだ。博物館見学はガイドのおばさんについて回った。交通渋滞のためにバスが定時よりも1時間遅れてしまったため、ガイドのおばさんは足早に説明をしては次、次と進んでゆく。それでも産業革命時のイギリス人がいかに試行錯誤をしていたのかを垣間見ることができた。しきりにマルクス&エンゲルスとマンチェスターの関係について聞く私に、ガイドのおばさんはそんなに興味があるのならここへ行きなさいと地図を渡して、指差してくれた。そこはChetham's School of Music。何でも学校の敷地内にある図書館がマルクス&エンゲルスと関係があるそうだ。

昼ごはんはフィッシュ&チップスで早々に済ませ。早速、その図書館に向かうことにした。ついたChetham's School of Music はなかなか立派な石造りの建物であった。入り口には警備員がいたのだが、マルクス&エンゲルスに関係のある図書館を見てみたいのだというむねを伝えたら、快く中に入れてくれた。学校に入ってわかったのだが、この学校の教室棟が城のように中庭を囲んでいる。なんというか、ハリー・ポッターのホグワーツ学院を小規模にしたような感がある。入り口から中庭をはさんで反対側に目的の図書館はあった。図書館といっても特別に建物が独立してあるわけではなく中庭を囲む城の一角が図書館になっている。

中は非常に趣きがあった。少しかがまなければ入れないような木の扉を開けてもらうと二階に続く階段があり、そこを上ると何百年もそこにありそうな本がズラーと並んでいる。不用意に触られることで本が悪くなるのを防ぐためであろう、どの本棚にも鉄の網カバーがついていた。そのことを差し引いても、歴史を感じさせる建物の中で本に囲まれる幸せを感じることができた。図書館の館長さんらしき人にマルクス&エンゲルスとこの図書館の関連性についてたずねてみた。すると、マルクスとエンゲルスが資本論に取り掛かっている間にこの図書館の一角を利用していたのだという。そこをたずねてみたかったのだが、現在他の団体がその一角を予約しているため今日は立ち入ることはできないといわれた。

帰りのバスの中で図書館でもらったパンフレットを読んでいてわかったのだが、私の今日訪れた図書館は1653年に設立されたイギリスで現存する最も古い図書館なのだそうだ。

先駆:precursor


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コメント 2

クラスメイト

すごい!ガワ氏さんの好奇心から、プライスレスな遠足になってるじゃないっすか!!いいなーー!おれも行けばよかった・・・。
イングランドに現存する最古の図書館、観光案内にはのってなさそうですもんね!その好奇心と貪欲さ、勉強になります!
by クラスメイト (2006-03-01 10:25) 

ガワ氏

プライスレスなコメントありがとう。そんなに褒めてもらうと照れる。ただ、今回の旅行が、今までと比べて有意義だったのは確かです。事前に色々調べてからいったのが良かったみたい。今後もだらだら連れてってもらうのではなく、事前調査をしてから行くのが吉。
by ガワ氏 (2006-03-01 22:19) 

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